ストーリー

Story
Vol. 13
家を建てて12年。つくり手に温かく見守られ
わが家は今も、暮らしに合わせて成長しています。
札幌市・F様邸
32坪の土地が引き寄せた
幸せな出会い

 「広さよりも大切なのは、共働きをしながら快適に暮らせること。汚れや傷さえ味わいになるような家を建てたいと思っていました」。そう語るFさんは、30代になって間もなくマイホーム取得を決意します。思い描いたのは「高台にある森に囲まれた暮らし」もしくは、「利便性の良い街なか生活」。どちらかを条件に土地探しを開始したご夫妻は、街なかながら近くに緑豊かな公園のある32坪の宅地と出会い、購入を即決しました。
 土地が決まれば次は家づくりです。「家は単なるモノではなく、生き方を語るもの」。そう考えていたFさんの目に留まったのは、フーム空間計画工房の宮島豊さんが設計した家でした。相談を受けて土地を見た宮島さんは、空間をスキップフロアで構成し、傷や汚れも生活の証として住まいの表情になっていく自然素材を多用した住まいを提案しました。「宮島さんの建築哲学に共感できたので、基本的にはプランはお任せ。不安は一切ありませんでした」と、Fさんは12年前を振り返ります。
 施工を任されたのは、大元工務店です。大元社長が独立間もない頃に宮島さん設計の家の現場管理をしていたことが縁で、依頼が舞い込んだといいます。「独立後、初めて手掛ける新築住宅でした。それまで10年近く一緒に仕事をしていたこの家の棟梁・秋山勝昭さんは、今も私の右腕。大元工務店の原点ともいえる一軒です」と大元社長は目を細めます。

2010年頃のFさん宅。夫婦2人暮らしだった新築時から、1年後には息子さんが誕生。ご夫妻が一日の大半を過ごしていたというカフェのようなリビングは、今と変わらない落ち着いた佇まい
2010年頃のFさん宅。夫婦2人暮らしだった新築時から、1年後には息子さんが誕生。ご夫妻が一日の大半を過ごしていたというカフェのようなリビングは、今と変わらない落ち着いた佇まい
家族で汗した思い出が
家への愛着に

2007年に新居が完成。2階のリビングから地下室まで、4つのフロアと吹き抜けが縦に連なる立体的な空間は、合理的で一切の無駄がありません。「家は約35坪で特別広くはないですが、僕らには必要十分なサイズ。何より冬は暖かいし、おおらかに自然体で暮らせています」とFさんは満足そうに話します。
 新築後、2人のお子さんが誕生。息子さんは11歳、娘さんは5歳になりました。「建築当時から、暮らしの変化に合わせて自分で家に手を加えたいと考えていて大元社長にはいつも相談にのってもらっています」というFさん。これまで、玄関前の花壇づくりにレンガの敷設、トイレの壁の塗装など同社の手を借りながら、ご家族自らが手を動かして「今の暮らし」にフィットする住まいに変えてきました。レンガ敷設の際に「金づちの使いすぎで腱鞘炎を患った」のも、今となっては笑い話。築12年の住まいには、たくさんの家族の思い出が降り積もり、愛着へとつながっています。
 2019年は半地下にある趣味室を、息子さんの個室にリメイクしました。棟梁の秋山さんが新たにドアを造作し、Fさん自ら壁塗りや床張りを行ったといいます。大元社長は「DIYしやすいように、あらかじめ材をカットして下地も組んだけど、日曜大工にしては大変な作業。ヘルプの呼び出しが来ると思って、心の準備をしていたんですよ」と、Fさんの作業に感心した様子でした。

トドマツにブラウンの塗装をした外壁は新築時からノーメンテナンスだが、そろそろ塗り替えを検討中。玄関前の花壇とレンガ敷きのアプローチは、ご家族で施工した汗と涙の結晶
トドマツにブラウンの塗装をした外壁は新築時からノーメンテナンスだが、そろそろ塗り替えを検討中。玄関前の花壇とレンガ敷きのアプローチは、ご家族で施工した汗と涙の結晶
つくり手と住まい手が
手をたずさえて育む住まい

 「DIYをやればやるほど、大工さんや職人さんの仕事の大変さと凄さが、身に染みて分かりました。家は暮らしの器。細かいことは気にしたくないといいながら、やっぱり中途半端に手は加えられませんね」とFさんはいいます。
 もうしばらく経てば、娘さんの部屋も必要になります。新築時には、子ども部屋を具体的に想定していなかったFさんのお住まい。近い将来、リメイクを終えた息子さんの部屋とスキップ階段でつながる「本の部屋」を、娘さんの個室にしたいと考えているそうですが、難関は未塗装の壁。塗装しようにも一部が半地下から吹き抜けになっていて高さがあるため、Fさんはなかなか腰を上げられずにいます。「これまでのDIY経験から、時にはプロの手を借りることも必要と学びました。今度の壁塗りは職人さんにお願いしたい」と笑うFさん。その言葉に「住まう人が知恵と手間を注ぎ込んだ分だけ、家は大切にしてもらえる気がします。私たちはそのためにどうサポートするのが良いのか、いつも考えています。Fさんとのお付き合いもまた、私たちが目指す工務店のあるべき姿。そういう意味でも、ここは私たちの原点だと改めて感じます」と、大元社長は想いを噛みしめるように話します。
 12年前に「ともに」つくり上げた家は、これからもつくり手に温かく見守られながら、家族と一緒に趣豊かに育っていくことでしょう。

当時の関係が
今も繋がっていることに、感謝。

 今から十数年前、当社の現場管理を手伝ってくれていた大元さんが工務店を立ち上げることになり、応援と期待をかねて施工を依頼したのがFさんのお宅です。彼の以前勤めていた建設会社での経験や我々の仕事への理解もあり、色々な提案に積極的に対応してくれました。

 Fさんご夫妻は素晴らしい感性をお持ちで、我々の提案と同様に施工にも理解と期待をしてくださいました。現場を担当した秋山棟梁も当時は若いながら、肝心な所のツボを掴んでいて期待以上の出来となりました。未完、ローコスト、合理的な施工を三者がともに楽しみ、素晴らしい経験を得られたと思います。この時の関係が繋がり、今日さらに発展していることに感謝しております。

(株)フーム空間計画工房 宮島 豊

Replan北海道126号掲載
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