ストーリー

Craftmen
Vol. 2
家づくりは個人競技ではなく、
同じゴールを目指す団体競技。
棟梁 中井 克巳
仲間ができて知った、
想いをカタチにする楽しさ

冬直前は、建築作業の追い込みシーズン。札幌市手稲区の高台にある現場でも、年内完成を目指す住宅の外壁工事が行われていました。その指揮を執っているのは52歳の棟梁、中井克巳さん。中井さんは銘木店に勤務するうちに数寄屋建築に魅了され、30歳で茶室づくりに取り組み始めたという異色の経歴を持つ大工さんです。「茶室は一人でつくるもの。自分の判断と技術だけを頼りに進む、ゴールが見えない孤独な仕事でした」と、中井さんは当時を振り返ります。

「本格的な茶室をつくることができる中井棟梁に、うちの建物でいつかその腕を振るってほしい。そんな機会が訪れることを願っています」と大元社長
(左)「引き渡しまで無理せず、しかしきっちり仕上げる」がモットーの中井棟梁。「そのためには雑務も率先してやってくれる」と、大元社長も棟梁の仕事ぶりに絶大な信頼を寄せる (右)現場で木を扱い続けてきた中井棟梁の手は、繊細で力強い

そんな中井さんに転機が訪れたのは10年前。同級生、同僚というキーワードから生まれた縁で、大元社長と現場をともにします。「実はね、初めは階段のかけ方も知らなかったんです。茶室には、階段がないから」。静かに笑う中井さんですが、大元社長は「とにかく真面目な方ですね。仕事が合理的で、判断が早い」とその人柄と仕事ぶりを高く評価。大元工務店の現場に、なくてはならない存在となりました。中井さんも家づくりを通してさまざまな技能を持つ仕事仲間が増え、現場でチームを組んで働く楽しさを知ったといいます。「大元社長と出会って、僕の人生は公私ともに180度変わりました」。

お施主さんの要望により近づけるため、現場での仕様変更は日常茶飯事。「その過程は、茶室づくりに似ています。これからも仲間の力を借りながら、お施主さんの思いをよりよいカタチに変えていきたいですね」と、中井さんは穏やかな目で淡々と語ってくれました。

大工仲間の多い中井棟梁は、現場の規模によっては10人もの大工さんを集めることができるそう。手稲区の現場では、幌村和則さん(右)と大和田松司さん(左)が、棟梁の指揮のもと建て方にあたっている。2018年春に入社したばかりの須藤志穂さん(後ろ中央)は、「現場に出ると、大工さんに教えてもらうことがたくさんあって、とても楽しいです」と笑顔を見せる
手稲区の現場では「木を生かした家にしたい」という住まい手の要望に応えるべく、中井組が抜群のチームワークで作業を進めていた
Replan北海道123号掲載
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