技術の粋を結集して、丈夫で長持ちする住まいを建てることは、建築を生業(なりわい)としているのなら当然のことです。ですが「長持ち」という、その時間的な長さだけをものさしに価値を語るのは、少し違うように思います。
なぜなら、住み手がずっとずっと「愛着」を持ち続けられる住まいこそ、100年経っても価値があると考えるからです。ご家族にとって「いま」最高の家を建てたとしても、ライフスタイルが変化したり、住まい手が変わると、その価値も変わってきます。ですがそんな時に、思ったとおりにリフォームができると、ご家族にとってその家の価値は間違いなく上がることでしょう。
それぞれの暮らしに応じた空間が実現できる。このような住まいこそ、価値を見出すことができるのではないでしょうか。
そして、職人が登場する場面こそあれ、そこで暮らしているご家族自らが住まいに手を掛けていけば、壁を塗ったり、棚をつけたりしながら「面白いね」「上手にできたね」と交わされる会話の一つひとつが、かけがえのない思い出になっていくことでしょう。住まいを維持するための工夫を積み重ねていけば、住まいに寄せる思い、愛着は深まっていきます。
主役であるご家族が、将来も住まいとの関わりを楽しんでいる姿をイメージすること。それが私たちの住まいづくりの基本です。